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ヴァ―レ・リーベ 第26話「ネットの声」 いつもの森にある河原まで、フライアは戻ってきた。優雅に流れる河の水面は日の光でギラギラと眩しく輝いており、種類の判別しない魚たちが泳いでいる。分厚い装甲に守られた重い脚を動作させ、ズシンズシンと足音を立てた。奏汰にはそのことを気にする気力が残ってはいなかった。倒木がある所でフライアは立ち止まった。肩 […]
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ヴァ―レ・リーベ 第25話「諦めない」 斜めになったコックピット内で、奏汰は身体を起こすと頭を数度振り、周囲を一望できるスクリーンで状況を確認した。どうやら建物かどこかに吹き飛ばされたらしく、フライアの周りには瓦礫が散乱している。 「あいたた………。大丈夫か?フライア………」 「私は大丈夫。まだ戦えるわ」 先程、何が起きたのかを思 […]
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ヴァ―レ・リーベ 24話「翼竜」 長く、退屈に感じた4限目の授業が終えるチャイムが鳴り、奏汰は目を覚ました。口元からは、わずかに涎が乾いたような感触がした。すでに授業の片づけをしていた他の生徒たちは、教材を机、或いは鞄にしまい、代わりにお弁当を広げた。財布をもってキャッキャッと購買の弁当や唐揚げを買いに廊下へ出ていった。 「急げ! […]
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ヴァ―レ・リーベ 第23話「登校」 月曜日。スマホのアラームがなる5分前、奏汰は目を覚ました。夢から現実世界へと引き戻された彼は、ふと、友樹に「明後日、学校に来いよ!出来たらでいいから!」と言われたことを思い出した。暗い部屋に遮光カーテンの隙間から漏れる日の光が、空気中に漂う埃を幻想的に輝かせる。彼の心の悲しみも、数日も経てばある程度 […]
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ヴァ―レ・リーベ 第22話「友樹の興味」「つまり、あのロボットは小黒が造ったもので、お前が操縦者になった、と?」 「まぁ、そういうこと」 フライアのいる森へ続く道を、奏汰は自転車を押して、友樹はその横を歩いて行く。 奏汰は結局、フライアのことを友樹に打ち明けた。さすがに、小黒友里の人格と記憶をAIにインプットしていることは隠したが […]
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ヴァ―レ・リーベ 第21話「初めての戦いの後」 いつもの森へとフライアは奏汰を乗せてやってきた。辺りはすっかり薄暗くなった。大きな物音を立てない様に注意しながら、足を踏み入れる。 「ここまで来れれば、ひとまずは大丈夫かな」 奏汰はようやく落ち着けるな、とまた背もたれにもたれかかった。フライアのコックピット内は1人分というには、少し広く思えた […]
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ヴァ―レ・リーベ 第20話「力比べ」 人々が生活を営む繁華街の道路に、2体のロボット。 両者はゆっくり、またゆっくりとお互いに脚を重々しく動かし、近づく。 ズシン、ズシンと足音が建物の壁に反響して、不規則なリズムを刻んでいる。 「なぁ、あいつ、人は乗っているのか?」 奏汰は、友里がこのフライアを動かしている時の記憶を思い出 […]
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ヴァ―レ・リーベ第19話「貴方を認める」 フライアは奏汰が首から下げる青いペンダントに備え付けられたカメラを通して、彼女のパートナーである古谷奏汰を見ていた。 奏汰は目の前にいるロボットに、わざわざ物を投げつけて、自分に注意が向くように仕向けている。 何故か。それはロボットの足元にある。 逃げ遅れた人間2人がロボットのそばにおり […]
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ヴァ―レ・リーベ第17話「奏汰が抱えるもの」「なぁ、結局、お前はこれからどうするんだ?」 奏汰は見上げ、目の前に聳え立つその屈強な造りをした兵士に問いかけた。鉄壁の鎧に包まれたその兵士からは、何者をも寄せ付けないほどの迫力のある見た目に反して、可愛らしい少女の声がした。 「私だって分からないよ。製作者様(小黒友里)に貴方をパートナーとして […]
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ヴァ―レ・リーベ第16話「貰ったもの」 街並がゆっくりと流れていく。電線に鳥が何羽も留まっており、細いはずの電線が黒く太い線に見える。大通りには車が行きかっており、そばに備えられた歩道にはカートを押す老人と下校中の小・中・高生以外が歩いている。そんな日常という風が、この街に吹いている。 その街に気配を溶け込ませながら、とぼとぼと奏汰は […]
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ヴァ―レ・リーベ 第15話「いつもと違う教室」 翌朝、窓から太陽の日が差し込み、電線やら電柱やらの影が徐々に伸びてきた。 奏汰が目を覚ますと、頬に乾いた感覚。 身体を起こして、そっと頬を触ってみるが、何も無い。 「朝、か」 昨日は夕飯を食べていないし、お風呂にも入っていない。そのまま眠りこんでしまったのだ。 はっきりとしない頭の […]
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ヴァ―レ・リーベ 第14話「失ったもの」 白い壁と焦げ茶色の木目調の屋根はくっきりと色と色と分けているお寺のとなりの駐車場では車が数台止まっていた。その中には黒くて前後に長い霊柩車が待機していた。 寺への入り口となる門の上には、漆黒の羽に身を包んだカラスがじっと、お寺の方を見ている。 不気味なその姿に加えて、人気のない木々が風で揺れ […]
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ヴァ―レ・リーベ 第13話「朝」 フライアが隠れる森から奏汰は1時間ほど走って、ようやく家に着いた。 夕飯も朝ごはんも食べず、しかも起きてそう時間が経っていないものだから、奏汰の視界はグニャリと曲がり、息が切れ、心臓がドキドキと脈打ち、汗で身体が濡れている。 膝にとついて息を整えて、やっとのことで顔を上げると、そこにあったの […]
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ヴァ―レ・リーベ 第12話「声」 朝。小鳥たちの楽しそうなさえずりがあっちこっちから聞こえてくるが、その姿は見えない。 きっと木の葉に隠れて遊んでいるか、餌を探しているのだろう。 ここは街の端にある森。普段、あまり人が立ち入らない場所。しかし今日は、そんな自然の中にそぐわない影が、そこにはあった。厚く頑丈な装甲に身を包んだロ […]
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ヴァ―レ・リーベ 第11話「託されたもの」 ━━━慟哭。 奏汰は、幼馴染の亡骸のすぐそばで、膝をつき、悲しみに涙を流し、声を張り上げて泣いている。 「うぅ………あぁッ!……ああッ!」 胸が、心臓が切り裂かれるように痛い。心が痛い。苦しい。まるで自分も彼女の後を追ってしんでしまいそうだ。 ずっと伝えたかった想いを、彼女に伝えた。 […]
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ヴァ―レ・リーベ 10話「死別」 薄く黄色い光は、太く、真っ直ぐと敵のロボットへ向けて宙を駆けた。 その光にほんの少し遅れて、凄まじい轟音が辺りの空気や地面を揺らした。 それまでそこにあったはずの丘は、原型を留めておらず半円形にえぐり取られており、しかも土がすっかり焦げてしまっていた。焦げた土の所々は赤く、未だ灼熱であり続け […]
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ヴァ―レ・リーベ 第9話「やるべき事」 幸い敵は鈍足らしく、敵影は無かった。 もしかしたら身を潜め、どこからか狙撃をしようとしていない限りは、まだ安全な地だった。 友里はフライアの肩に立ち、辺りを確認した。 戦闘を行うとすれば、ここの広さは十分であり、また閉演時間を超えているため、人は少ない。 職員はいるだろうが、少し離れ […]
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ヴァ―レ・リーベ 第8話「判断できない」「私は、2週間で日本語を理解した。必要だったから……………。それからは奏汰が知っての通り、毎日実験やら研究やらを繰り返してきたの」 奏汰は友里の言葉の一つ一つに注意深く、静かに聞いていた。いやむしろその信じがたい話に口を開き、声を失っていたとした方が正しいかもしれない。 全てを理解し信じろと言 […]
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