• ヴァ―レ・リーベ 第5話「人間関係」

     

     「クラスで、根も葉もない変な噂が立っているのは、古谷も知っているな?」  奏汰や友里のクラス担任である佐藤先生は、他の教師たちが忙しく雑務をこなしている職員室に奏汰をお呼びだし、出来るだけ穏やかに務めて、話を切り出した。 「………はい。今朝、ニュースでやってた、工場が爆発して、それがロボットの襲撃のせいじゃないかって話ですよね。それを友里がやったって。でも俺はおいつがそんなことをしない…



  • ヴァ―レ・リーベ 第4話「異変」

     

      次の日の朝、今日は友里は研究のために学校に体調不良という名目で休み、奏汰は1人で登校することとなった。  1人で歩く通学路は味気なく感じ、ワイヤレスイヤフォンで音楽を聴きながら早歩きで学校に向かって歩いていた。  とあるアニメのOPソング。それは朝に聞くにはピッタリなほど元気な曲で、この世の絶望や不平不満など全て吹き飛ばしてしまうようなもので、友里と登校しない日はいつもこの曲を聴いて…



  • ヴァ―レ・リーベ 第3話「秘密」

     

      他よりも大きな白い家の黒い表札には小黒と書かれており、その家の中のリビングではカチャカチャとフォークと食器が軽い音が、踊るように両サイドからなっていた。  リビングはラボの隣にある、比較的片付いていて、尚且つずっと小さい部屋で、テーブルにパスタやスープが彩られて置かれた食器が並び、近くの椅子には友里と奏汰が向かい合って座っている。今夜の夕飯は家に家族がいなく、また家事が不得意な友里の…



  • ヴァ―レ・リーベ 第2話「研究室」

     

      杉田高等学校の校舎には約1000人もの生徒が、40人ごとに教室に入り、自分たちの席に座り、教科書を広げノートを広げ、教師によって行われる授業を聞いて、必要であればメモを取るし、指示があれば問題を解いている。  しかし一般的で真面目で優秀な大多数の生徒が、教師の理想とする授業態度をとるのに対して、少数の生徒はそうではなかった。ある者は、教師にバレないように教科書を立て、持ってきていたお…



  • ヴァ―レ・リーベ 第1話「天才少女」

     

      街。平穏な街。大勢の人間が、アスファルトをも焼いてしまいそうな朝日に見守られながら、しかし見守られていることなど露ほども知らず、スマホやら携帯電話やらを見るために下を向いて歩いている。どこを見ても大勢の人の群れ、動かない車の列、何度も行きかう電車、広い空に独特な機械音で存在感を隠そうとしない飛行機。誰もが忙しい。そんな息苦しく、物々しい風格とは無縁な街。都会とは少し離れている街。  …



  • コスモス最終回「新たなる旅立ち」

     

      空は薄く明るくなっており、青空は見えているのに太陽はまだ昇っていない。  コスモスは少し長い汽笛を二回、長い汽笛を一回鳴らした。  これは本当なら車掌を呼び出すための汽笛合図だけど、今回は僕に準備が出来たことの合図だろう。  大人の身長よりも遥かに大きい動輪の元まで行き、その巨体を見上げてみた。  煙突からは白い煙が上がっていいき、まるで青い空に溶け込んでいくようだった。 「自己修復…



  • コスモス第二十五話「また別の場所での戦い」

     

      コスモスは敵艦の中の大きな部屋で停車した。  そこには装置やモニターが多くあり、またこの場にいる十数人の乗組員の中で他の誰とも服装が違っていて、帽子もしている男が見えた。  どうやら彼はこの艦の艦長のようで、ちょうど敵艦の艦橋で停車できたようだ。  艦長は静かにこちらを見据えている。  中央のモニターで確認する限り、他の下級の乗組員は戸惑いながらもこちらに銃を向けて、ある者は発砲して…



  • コスモス二十四話「出撃」

     

      いつも部屋の中を明るく照らしてくれる照明は消え、非常灯とモニターの明かりだけが頼りとなった。  これから、本物の戦いが始まる。  そう、本物の戦いが……。  その事実に段々と心臓の音が大きくなり、背中からは汗が滲む。 「機関出力、上昇。反転します」 「……なんとか相手を止められるかな」 「マスターが望むなら」 「心強いね」 「私はマスターの列車ですから」 「うん」と僕はうなずくと、ふ…



  • コスモス二十三話「必ず救ってみせる」

     

      そこから降りてきたのは慶介とイオ。 「何で……何で来たんだ!慶介!!」  俺は叫んだ。  しかし、慶介の表情は真剣そのもので、こちらに視線を送り、まるで「大丈夫」と言っているだった。  2人が数歩歩くと、突如として戦闘員の誰かがイオの元に棒状のものを投げ、半透明の緑色のドームのようなものが展開された。  それにはイオも慶介も驚いていた。 「あれは……」 「猛獣向けに作られた携帯用捕獲…



  • コスモス第二十二話「人質」

     

     「旅立つなら、明日がいい」とハンザは言って、白いコップに入ったお茶を一口啜った。  お別れに最後の夕飯をとった僕らは、大きな窓のそばにある、紫色のソファーに腰かけてゆっくりしている。  外はもうすっかり暗くなっていて、水色の月の光が夜空に浮かぶ雲を照らし出していた。  今まで気が付かなかったけど、この世界の月は地球で見た月よりもずっと大きく、模様がはっきりと見える。  もしかしたらこの…