《オタクサバイバルNEXT》 第3回 十話までを比べてみよう~初代とAGEの主人公の抱える『葛藤』と『断絶』を見てみる

By 管理魔術師, 2012年6月10日

執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺
N03:十話までを比べてみよう

 さて、それではいよいよ、初代ガンダムとAGEの比較講評の実践をしてみよう。
 とはいえ、AGEはまだ未完なので、ここではそれぞれの第十話までの比較、という形にしてみたい。
 まずは主人公の抱える『葛藤』と『断絶』を見てみる。
 初代ガンダムの主人公、アムロは、本質的には引きこもりがちで、自分の興味を満たす事に人生を捧げたいというタイプだが、戦争という状況がそれを許さないため、望まぬ戦いに身を投じる羽目になる(葛藤)。
 そして、そんな自分を理解してくれる人は誰もいない(断絶)。
 ——————というのが、十話までの流れで見える部分である。
 未成年の一般人であるアムロがガンダムを一番うまく扱えるという事実が、周囲の人達の葛藤(★補1)としてもちりばめられていて、それがアムロの断絶をさらに助長している構造なのが興味を引く。
 一方、AGEはどうか? 主役のフリットは、「謎の敵によって家族と故郷を失い」、「死んだ母親から託されたガンダムで敵討ちをしたい」という喪失経験を持ち、「しかし自分は技術者であってパイロットではない」と言う葛藤と、「周囲の人々は謎の敵・AEの事をあまり理解していない」という断絶があるのだが……これが第一話で早くも解消してしまう。
 その後は、なるほど毎回それなりの危機は迎えるものの、どうも物語上の『溜め』が不足したまま状況が推移してしまい(★補2)、先の展開が見る側の予想を上回らずに進んでしまうキライがある。
 『葛藤』と『断絶』は、嫌みにならない程度に回数を重ねる事で効果が出るのだが、この部分が浅いまま進んでいるので「感情移入しずらい」のである。
 それでいて、従来のシリーズになかった『演出』要素はかなりの数が投入されてくるものだから、感想の多くが好き嫌い次元でしか語られてないのが現状のようだ。(以下次回)


補1
 ウザキャラとしての側面が現在でもパロディネタの筆頭となるブライト、そのブライトからさえ全権を奪おうとするワッケイン、などなど。
 「何で誰も分かってくれないかな?」という気分が特に連邦軍陣営全体に広がっていて、理想と信念に裏打ちされて行動しているジオン軍とは好対照、さらにそのジオンにあって異質な決意を秘めているシャアが浮き彫りになる、という多重構造が見事。
 しかし、それ故に一見では全貌を把握し辛いのも確かではあったため、人気の盛り上がりは再放送を繰り返してからとなった次第である。
補2
 コロニー崩壊まであと6時間、住民を逃がしている時間がありません、に対して農業ブロックコアを戦艦で曳航して逃げれば間に合う、しかし艦長はその気が無い、その艦長以下の乗組員を非合法な手段で排除する新艦長……と、確かに段階だけは多いのだが、各段階に絶望したり悲観したりする被害者がいない上に、対策を発案する人も実行する人も妙に物わかりが言い優秀な人材がそろっているため(※メアリー・スー現象か?)、巻き起こった困難に対しての対策があっさり出すぎる印象を受ける。
 さらに、対策の進行に対する妨害の件数と人材的伏線の件数が簡単に見通せてしまうため、予想通りの展開に収まりがち、と、なんだか総集編の名場面集を見ている感じになっている。
※注釈・メアリー・スー
 米国SFドラマ『スタートレック』から来たと言われる物語創作上の用語で、「事態に比して優秀すぎる人材が無敵無双状態になって逆にうざい」様な事を言う……、らしい。
 これは原作のスタートレックがそうだったわけではなく、原作を受けて書かれたある同人小説が、「作者が自分を投影したオリジナルキャラ『メアリー・スー』に肩入れしすぎた結果こうなった」と言う事……、らしい。
 「私ならこうするのに」という良い考えは、ドラマを見終わった後だから言えるのであって、実際にはそうそううまく立ち回れるモンでもない訳だが、この辺を見誤ると陥りがちな創作上の落とし穴である。
 ……らしい。
 ……らしい、と連続するのは、この辺の事情が筆者にとっては先輩方の受け売りであって、実はよく知らないからである(陳謝)

◆次回は、N04:これは良い点? 悪い点?
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
 80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
 ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
 独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
 唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
 既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)

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