【感想】映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史

 原作にあった、のび太と殺し屋ギラーミンの対決シーンが入っているだけで、高評価せざるを得ない。
 と言うと大袈裟ではあるが、水田わさび版の『ドラえもん』を支持する私としては、満足したのは確か。
 今もって大山のぶ代版の頃が良かったという声が多いようだけれど、原作ファンを公言する人からして大山版が良かったというのは、私には不思議で仕方ない。
 大山版は、「子供たちに汚い言葉を教えたくなかった」と本人が語っているように、ドラえもんというキャラはもちろん、作品全体が、どこかお行儀良くて私は好きになれなかった。子守ロボットとはいえ、ドラえもんが保護者然としていて「友達」のような親しみを感じないのは寂しかったし、原作ではクラスメイトと一緒に、のび太を笑い者にしていたしずちゃん(原作での呼ばれ方)は、まるでマドンナのような高みにあって、「自分のクラスには居ない」遠い存在のように思えたものである。
 だからなのか、大山版での『宇宙開拓史』では対決シーンが削除されていた。殺傷能力の無いショックガンとはいえ、主人公が人を銃で撃つ描写を避けたと云われている。それが復活しているのだから、こんなに嬉しい事は無い。
 もちろん、不満な点はある。今作では、より移民団の開拓の苦労に焦点を当てて新キャラを出したりしているため、のび太とドラえもん以外のレギュラーキャラが、ほとんど空気と化していて話に絡んでこないし、物語の舞台となるコーヤコーヤ星の生き物たちは舞台説明のためだけに描写されている感じで、「いたら面白そう」という興奮が掻き立てられなかった。
 さらに、最大の危機の解決が、ドラえもんの道具によらず、新キャラの活躍で成されたことも、『ドラえもん』という作品として考えた場合、別作品のような違和感があるのは確かだ。
 それでもやっぱり、あののび太が無駄にカッコイイ対決シーンがあるおかげで、のひ太に自分を仮託して愉しめた。

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