子供を護る56の方法 その8【火事からの脱出】

 火事における死因の多くは、焼け死ぬのではなく、有毒ガスによる中毒や、一酸化炭素中毒による窒息死とされています。
 特に一酸化炭素中毒の場合は、「苦しい」と思うよりも前に気を失ってしまったり、逆に意識があっても体が動かない状態になるため、注意が必要です。
 ですから、火事から脱出するさいにまず必要な道具は、懐中電灯と濡れタオルです。
 懐中電灯は携帯電話の画面の点灯でも代用できますが、脱出後の連絡手段として必要となる可能性があるので、ミニライトでも構いませんから専用の物がお勧めです。
 そもそも何故懐中電灯が必要かというと、第一に火事になると建物内の電気配線がダメージを受けて灯りが消えるからです。第二に、昼間に窓などから外の光が入っている環境であっても、煙にまかれたら腕を伸ばした先の掌が見えなくなるほど視界が悪くなります。
 いずれにしろ、火事においては精神的なパニックも重なって判断力が低下しますから、方向感覚を失い、通常時には分かっているつもりの出口を把握できなくなると思っておくべきです。壁に手をつき、体を低くして壁沿いに避難しましょう。
 そして、濡れタオルは煙や有毒ガスを吸い込まないために口に当てるという目的はもちろんですが、熱い空気を吸い込んで気管支に火傷を負うのを避けるためでもあります。
 火事のニュースで、「咽喉に軽い火傷を負い」というフレーズを見聞きしたことのある人もいるでしょう。
 医学的には火傷の治療法というのは冷やす以外に存在せず(手足を熱湯で火傷して病院に電話したら、電話してる暇があったら冷やして下さいと言われたという話もあります)、その後は細菌による感染を防ぐことに専念するのみとなるのですが、気管支はいわば内臓ですから、内蔵の損傷は外傷よりも致命的なものとなります。
 濡れタオルは、いわば吸い込む空気の温度を下げるのにも必要なのです。
 最近ではハンカチを持たずにティッシュペーパーで用を足すという人が増えていますから、いざとなったら着ている服の袖などで代用するとして、水分の確保には、水筒かペットボトルを持ち歩いておくのが良いでしょう。
 また就寝中の火事というのも脱出が困難になる状況の一つですから、枕元には常に懐中電灯と水分を用意しておくべきです。これはそのまま、地震への備えにもなります。
 ところで、出火時に現場にいる場合はどうするべきか。
 通常であれば消火を試みるべきですが、本稿の主旨は「子供を護る」ことですから、まず子供を逃がして下さい。
 すぐに消火できて、大ごとになってしまう可能性がありますが、恥をかくことなど、子供の無事に比べれば些細なことです。
 そして子供にも、親や頼れる大人が一緒に居ない時には、消火をしようとは考えずに逃げるよう、よく言い聞かせておいて下さい。
 119番に通報したりするのも、逃げてからにしなさいと。
 これらは、「火遊び」による火事に備えてのことです。
「火遊びは駄目」といくら言っておいても、子供の好奇心は躾などで抑えられるものではありません。
 その時には、

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