【取材】 竹本泉原画展

竹本泉原画展 竹本泉は少女漫画誌でデビューし、以後は少年誌や青年誌、学習雑誌やゲーム雑誌など活躍の場を広げてきた。描くジャンルもまた、SFであったり学園物であったりと多岐にわたるにもかかわらず、極めて特徴的な作風を確立している。
 なにしろ仕事の依頼をされる時、それがどんな媒体でもジャンルでも、「いつものでお願いします」「いつもの感じで」「いつもので任せます」と言われるらしく、単行本の挨拶文では「いつもの漫画家、竹本泉です」と書いてあることが多い。
 これはつまり、竹本作品自体が、あたかも一つのジャンルで、かつ描けるのは竹本泉以外にはありえないということ。
 先ごろ不慮の事故で亡くなった臼井義人の『クレヨンしんちゃん』や、病気で亡くなった藤子・F・不二夫の『ドラえもん』などは、今後も他の人達の手で継続できそうなのに対して(もちろん原作の素晴らしさがあってこそ)、もしも竹本泉が漫画界から去ることがあれば、誰も継げないのではないかと思う。
 しかも、竹本泉というジャンルには一人しか居ないのだから、それこそ学園物やファンタジー物といったジャンルが、まるまる一つ漫画界から消えてしまうようなものなのだ。
 だからこそ、この原画展は竹本泉の柔らかな線、穏やかな気持ちになる色使い、ムズムズさせられるエロチックさ、懐かしく未来的なデザインを、愉しめる貴重な機会だった。
 小ぢんまりした画廊は、ものの10分ほどで見終えることもできただろうけど、ここはやはりゆったりと堪能。「いつもの」竹本泉の絵柄は、ずっと変わらないものと思っていたが、こうして一度に歴代の作品を眺めてみると、その変化が分かり面白かった。
 2009年9月27日(日)まで、『GALLERY IN Fields』(代々木上原駅から徒歩1分)にて。

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