《オタクサバイバルNEXT》 第4回 これは良い点? 悪い点?~初代ガンダムとAGEでは、企画者の意図するところで決定的な違いがある

執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺

N04:これは良い点? 悪い点?

 前回で、初代ガンダムとAGEの第十話までの展開を比較してみた。
 さて、ここで一つ考えねばならない点がある。
 比較によって浮き上がってきた差異は、果たしてそれぞれの良い点、悪い点のどちらなのだろう?
 箇条書きトリックとして、AGE叩きを前提に誘導するなら、これは悪い点にも見える。
 しかし、視点を変えてみるとこれが意外にそうでもない可能性があるのだ(★補1)。
 初代ガンダムとAGEでは、企画者の意図するところで決定的な違いがある。
 初代が「ロボットアニメでも大人の鑑賞に堪えるドラマは作れる」点に重きを置いていたのに対し、AGEは「現代の子供達に向けたガンダム」である事を明言しているのだ。
 主人公の抱える『葛藤』『断絶』が短いスパンで切り替わり、結果主人公は新たな技術に恵まれる事はあっても、精神的な変化はあまりしない手法……我々は、この手法に覚えがあるはずだ。
 アニメ版の『ポケットモンスター』である。なるほど、あれはあれで面白い作品である。
 初代ガンダムは、本放送時、視聴率や玩具販売に苦戦して打ち切りになった事はすでに周知の事と思うが、この理由の最たる部分が「子供に受けなかった(もともと子供向けに作ってないのだから当たり前)」点にある事は明白であろう。
 精神的に大きな成長を遂げていく話というのは、感情の閾値(★補2)が大きすぎて、子供にとってはわかりにくい話になるのだ。
 故に、AGEにおいては、物語構造は子供向けに閾値の小さい、スパンの短い変化に乏しい構造をあえて採っているのだ、と推測できる。
 問題は、物語構造の狙いがそこにあったとしても、『演出』が、ある意味斬新(★補3)なキャラクターデザインを除いて、旧作からの延長線上にある思考法で組み立てられているため、見る側がどちら向きに処理して良いか戸惑う構造な点にあるのだ。(以下次号)


★補1
 可能性はあるのだが、その上でやはり、どこか……という感じでもある。
 とりあえず、弁護出来る材料は全部出した上で判断する必要があるためこういう展開を採っていますが、その上で結論はやはり「現状残念」となってしまいますので、まあそのつもりで本項目を最後まで読んでみてください。
★補2
 ある刺激の蓄積が一定量になるとそこで初めて刺激として知覚される、という様な意味合いで「閾値」という言葉を使っていますが、厳密には違うかも?
 ともあれ、一気に大きすぎる刺激が加わると、足りない時とは違った意味合いで刺激本来の意味とは異なる感じ方をしてしまう事があるのは、「痛すぎて感じない」や「辛すぎて寒気がする」などで皆さんなんとなく経験があると思われます。
★補3
 初代のキャラデザインは、アニメ的な記号論を極力廃しつつキャラ立てをする実験でもあったため、正当続編ではそれを踏襲する流れにあった。
 しかし、ある意味「ガンダムを一回ぶっ壊す」ことを念頭に置いたGでは「劇画調」なデザインを、「新世紀スタンダード」を目指したSEEDでは「萌え系」を取り入れており、その観点からすると「低年齢向け」だから「今現在で典型的幼年漫画」のラインはギリギリあり、じゃあないかと。
 ……だからといって、もしも「キャラクターデザイン・藤子不二雄A」とかだったらさすがにビックリしますが(笑)

◆次回は、N05:散歩なのか冒険なのか
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
 80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
 ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
 独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
 唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
 既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)

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