<<通巻14号>> 14:科学考証とSF考証

記事提供元:北園茶房
執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺

14:科学考証とSF考証

 では、そもそも「科学考証」と「SF考証」では、何がどう違うのであろうか?
 それを考える上で、最適なテキストブックが2つある。
 柳田理科雄の「空想科学読本」シリーズと、長谷川裕一の「すごい科学で守ります!」シリーズである。
 「空想科学読本」シリーズは、いまやそれなりの著名人となった柳田理科雄氏の出世作であり、アニメや特撮、コミックにおける様々な現象を科学的に解明していくと実はこうなる! ……的な娯楽書である。
 堅い否定論に終始しがちな「科学考証」を、笑える読み物としてまとめ上げた手腕が評価される好著である。
 一方、「すごい科学」シリーズは、国民的特撮番組シリーズである『スーパー戦隊』を中心に、東映特撮作品の世界観を一つにまとめて考証していくという内容であり、ここでは、一定のルールに基づいて、作中の「すごい科学」としか言いようのない各種の現象を、「SF考証」の手法を巧みに用いて、見事にまとめ上げている。
 両者を読み比べてみれば、「科学考証」と「SF考証」の差は歴然である。
 「科学考証」は、すでに実証されている理論以外は基本的に取り入れず、理論と公式に実直に築き上げていく「理数系」の手法である。場合によっては劇中現象の否定もあり得る。(★補1)
 一方、「SF考証」は、劇中の現象は基本的に事実として捉え、それを実現し得るにはどのような解釈をすればよいか、という点を、複数の現象相互に渡って矛盾がないように考えていく「文系」の手法なのである。
 「科学考証」を基礎として、「SF考証」がその応用、と考えてもよい。応用だけに、手間暇は数倍かかる。その手間暇を購うのは、なによりも「愛着」、その一点なのである。


補1
 最近作を読んでみると、柳田氏も「SF考証」的な手法をぽつぽつと取り入れ始めているようである。これは、氏の目的が「作品を科学的に否定すること」ではなく、「作品を元にして科学をおもしろがろう」という点にあるからだと思われる。

◆次回は「15:あの日のアカレンジャー」
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
 80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
 ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
 独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
 唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
 既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)
 『ためログ』にて記事を執筆。

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