<<通巻9号>> 9:円谷英二の見ていた空

記事提供元:北園茶房
執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺

9:円谷英二の見ていた空

 円谷英二。
 言わずと知れた「特撮の神様」である。
 明治34年生まれの円谷氏は、元々は航空機のパイロットに憧れたところが、その「オタク的人生」のスタートラインであった。
だが、努力の末に入った航空学校が不幸な事故で活動停止。技術畑に進んで、様々な玩具や商品の開発に従事する事になる。
その後、とある偶然から映画制作に関わる事になり、大空への夢をここで叶えていく事にもなるのだが(補1)、ココまでに何の縁も無ければ、映画の撮影などできるわけがない。
 円谷氏にとっての「引き継いだ系譜」は、いったいドコにあったのだろう?
円谷氏が多感な少年時代を過ごしたのは大正期。活動写真として庶民の娯楽に定着しつつあった「映画」は、この時期、大きな飛躍を遂げている(補2)。
映画以外にも、大正期における日本の文化・創作分野は非常に水準が高かった。
 これは、伝統文化と西洋から入ってきた新たな文化が、およそ半世紀を経て円熟・融合した結果、21世紀平成現在のモノに負けないどころか、現在の我々がまだ追いつけていない部分もある程である(補3)。
円谷氏は、この時期にちょうど多感な時期が重なっている。「航空機」という新たなモノに憧れる感性は、映像技術方面にも向くのが当然だっただろう。
この後、日本の文化芸術分野は、さらなる高見を見ることなく、激動の昭和初期における戦争でもって壊滅の憂き目に合うわけだが、戦前戦後を挟む形で、円谷氏や、例えば手塚治虫氏など、戦後において「天才」とされる才能によって、辛くも引き継がれることになる。
 そして、戦後半世紀を過ぎてようやく、 「円谷英二氏の見ていた空」に、我々はようやく近づき、やっとその背中が見えてきたところなのだ。
 それを踏まえて、 次回は「萌え=浪漫主義」という説を検証してみよう。


★補1 
 『1919年(大正8年)、18歳。新案の玩具が当たって多額の特許料が入り、祝いに玩具会社の職工達を引き連れ飛鳥山に花見に繰り出した際、職工達が隣席の者達と喧嘩を始めた。
 円谷がこの仲裁に入ったことで、喧嘩相手だった天然色活動写真株式会社の枝正義郎に見初められ、映画界に入ることとなる。』(ウィキペディアより)
 ……ものすごい偶然だが、こういう出会いがあったとしても、そもそも映画に興味がなければその後の展開は無いわけで、氏は飛行機だけではなく、技術全般に興味が深く、またその幅が非常に広かったことが伺われる。
 オタク的才能の一つのポイントが、1つをきっかけに幅広く複数の興味を持ち、その系譜を融合進化させていく部分にある事が、この事例からも明らかだろうと思われる。
★補2
 今や日本の基幹芸術であるアニメーションも、この時期に産声を上げている。
★補3
 近代化というのは往々にして効率化と同義であるが、高度な製造技術が伴えば、効率を実現しつつ、高度な装飾を加えることが可能となる。
 21世紀に入ってやっと10年弱、最近ようやく、大正末期に見られた「効率的でなおかつ小ジャレたデザイン」のモノがポチポチと出始めた感がある。
 実例としては、特に車のデザイン。
 ちょっと前までは各社ともに没個性な効率的デザインが主流であったが、最近売り出されるエコカーや多機能カーは、一目で分かる個性を盛り込んだデザインが復興しつつある。
 しかし、未だにいわゆる『クラシックカー』の持つ、独特で個性的な魅力には届いていない、という感じである。

次回は「10:オタの源流」
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
 80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
 ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
 独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
 唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
 既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)
 『ためログ』にて記事を執筆。

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